guatemala atitlán la voz


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ゴッホの手紙 小林秀雄

 

扨て、僕の仕事の事だが、

僕は仕事に命を賭している。

そして既に僕の理性は、その中で半ば崩潰した。

それはそれでよろしい。

 

僕は絵を書くのが好きなのだ、

いろいろな人や物や、人生の凡てのものを眺めるのが好きなのだ、

拵えものの人生だと呼びたければ呼んでもよい。

まさしく、本当の人生とは、これは違ったものだろう、

だが、生きる用意がいつもあり、

又、いつでも苦しむ用意の出来ている人間の種類に、

僕が属しているとは思わない。

タッチとは、絵筆の一と刷毛とは何んと奇妙なものだろう

 

人生は、こうして過ぎて行く。時は再び還らない。

 

ああ、テオ、君に丁度今頃のオリーヴが見せたいよ。

古銀のような葉、銀は青の背景の中で緑に変る。

色づいたオレンヂが大地を鋤く。

その細やかさ、鮮やかさ!

ここのオリーヴの林のざわめきには、

まことに忍びやかな、

実に古い古い何かがあるのだ。

あまり美し過ぎて、描けもしない、画想を廻らしてみる事も出来ぬ。

 

 

 

 


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